蔵元便り

4月

やっと、やっと!

 3月14日、蔵の中は華やかで、清々しい香りに包まれました。大吟醸の上槽です。醪の後半期間、目標とする日本酒度までの進み具合が鈍ってしまい、「いつ止まるか」と心配で心配でなりませんでした。おやっさんと二人、毎日毎日、何度も覗き込んでは「こいつは手がかかるなぁ」「困ったなぁ」と話していました。あれこれ考えては手をかけてみるのですが、一向にこちらの言う事を聞いてくれません。常にマイペースで少しずつしか進んでくれませんでした。
 そんなこんなで、通常の年に比べ、醪期間が何日も余計にかかってしまいましたが、やっとのこと上槽にこぎつけました。大吟醸クラスは搾り方も特別で、「袋吊り(写真上)」と呼ばれる、木綿の布袋に醪を入れ、自然にお酒が垂れ下がってくるのを待つ、贅沢で手間のかかる方法で搾ります。今か今かと待ち続け、やっとのこと斗ビン(写真下)に姿を現したお酒は、すばらしい香りと、バランスのとれた味をしていました。「あれだけ世話を焼かせやがって」と、おやっさんと二人、笑顔でほっと胸をなでおろしました。
 

お別れ会

 今年の酒造りが全て終了し、おやっさんが地元へ帰ることになりました。特に今年は、出来の悪い生徒(私)につきっきりで酒造りを教えなければならなかったので、余計に疲れたと思います。そんなおやっさんに感謝の意を込めて、「お別れ会」を開きました。昨年11月から始まって約5ヶ月、毎日朝から晩まで酒造りのことをいろいろ教えてくれました。これは私にとってかけがいのない財産です。
 隣に座った私に「別れの杯だ」といって酒を注いでくれ、私達は無言で酒を飲み干しました。胸がジーンときました。また来年、今年のようにいいお酒をつくろうぜ!おじぃ!
ありがとうウルトラマンメビウス!
  ありがとうウルトラ兄弟!

 今月もウルトラマンネタですみません。でも、どうしても書いておきたい事があるのでお付き合いを。
 「ウルトラマンメビウス」のTVシリーズが終了しました。感動のラストシーンは息子の心にずっと残ることでしょう。時代が求めているのかもしれませんが、多くのヒーローがどんどん「軽く」なっていく(主題歌もイメージソング的ですし)中で、「正義」「優しさ」「仲間」「絆」など普段ではちょっと言えないようなこと、でもヒーローには欠かせないことを真正面から謳っているのは、「ウルトラマン」と「アンパンマン」だけのような気がします。だから子供には見て欲しいと思いました。
 宇宙警備隊のルーキーが仲間と共に成長していく様子、そしてウルトラ兄弟たちの強さや優しさは息子の心に響き、いつの間にか私までも引き込まれ、ウルトラマンに憧れた子供の頃の心に戻っていました。私と息子が対等の立場で話が出来、同じ目線で遊べたこと。土曜の夕方5:30からの30分間は私と息子にとって実に幸せな時間でした。ラストシーンでヒビノ ミライが光の国に帰るためにウルトラマンメビウスに変身する時、微動だにせずTVを見つめる息子の瞳には光るものが・・・。仲間たちと共に成長したんだな。これで君もウルトラ兄弟の仲間入りだね。
 
 優しさを失わないでくれ。
 弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。
 たとえその気持ちが何百回裏切られようとも。


 ウルトラマンエースの言葉です。世界中で子供たちを取り巻く環境の悪化が叫ばれ、貧困や飢餓、病気といった問題も相変わらず続いています。日本でも虐待や犯罪に巻き込まれる子供たちが増えています。「人をみたら泥棒と思え」なんて世の中は辛すぎます。大人である私達が変わらなければいけないのは解っています。でも、子供たちにもこの言葉を覚えていて欲しい。そしてウルトラマンメビウスのような強さと、大きな心、大きな優しさを忘れないでいて欲しい。それが私の願いです。