蔵元便り

5月

旬の味わい

 暖かい日が続き、蔵の池で飼っているメダカやエビたちも食欲旺盛になってきました。蔵の敷地を見回すと、春の味わいのひとつ「蕗」がたくさん葉を広げています。ん?そうなると気になるものがもうひとつ・・・。
 ということで向かった先は別の場所にある竹薮です。目的は竹藪の維持・管理です。竹薮は放置しておくと勝手に広がってしまい、周囲の景観はもちろん、他の樹木にも影響を与えてしまいます。それを防ぐためには今の時期が一番!そうです、筍掘りです。竹薮にいってみると・・・。あります!あります!さっそく持ち帰り、皮むき作業の後、茹でてみんなで分配しました。
 「今夜は蕗と筍で一杯。」春の味わいを満喫した一日でした。

 ※筍掘りは竹薮の維持・管理が目的です。決して筍を味わうことが目的  ではありません。といったところで誰も信じないでしょうけど・・・

New Project 始動!

 冬の間殺風景だった山の色も緑色に変わり、草花の新芽もどんどん伸びはじめ、トカゲやカエルの姿もよく見かけるようになりました。春本番です。春を迎え、心新たな今、私たちにとってビッグ・プロジェクトが動き始めました。
 私たちは日々「全部自分たちで造ってみたい」ということを話していました。自分たちで作った酒米で自分たちが目指す酒造りをしたい。しかし、手間がかかる酒米のこと、なかなか手が出せなかったのです。そして今年、とうとう立ち上がった男が一人・・・。そうです、「米作り日記」でおなじみの四方部長が「ワシがやったる。」と一言。おー、カッコェー!もちろん田植えや手入れは全て私たちで行います。これで、念願の「お米からお酒まで全部自分たちで造ること」ができます。米の品種は「五百万石」、収穫予想は1,500kg、農薬も極力使わないで行こうと思います。
 プロジェクト名「Pride of Brewer。さて、どんなことになるのやら・・・最初の一歩、田植えはゴールデンウィーク中を予定。米作りの様子は随時レポートします!

 4月は入学・進学の月です。新しい環境に少し慣れてきた小学1年生たちが、今日も大きなランドセルを背負って、楽しそうに蔵の前を歩いてゆきます。
 我が家も息子が幼稚園に入園しました。お母さんと毎日買い物に通うスーパーの向かいに幼稚園はあり、彼の目には幼稚園はとても楽しい所に映ったようで、自分から「幼稚園に行きたい!」と言い出したのです。今まで狭かった彼の世界も広がると思い、私たちは入園させることにしました。彼は幼稚園がとても楽しみだったようで、「幼稚園を恐怖と絶望で包んでやる(ヤプール人のまねをしながら)」などと幼稚園のことを毎日のように言い、言葉はめちゃくちゃだけど「早く行きたい!」という気持ちが私たちに伝わってきました。
 入園式の前日の夜、ぶかぶかの制服を着て、ウルトラマンメビウスのファイティングポーズをとり、「おとうさんデスレム!(私もついに怪獣に降格)僕は一人じゃない!」と叫んだ息子はやけに大きく、力強く見えました。、
 私も幼稚園に入るときの事を思い出していました。ものすごく鮮明に覚えています。そもそも「幼稚園」というものが何であるかよくわからないまま、ぶかぶかの制服を着させられ、家族に「カッコイイ」などと言われてなんとなくそんな気になっていたのですが、翌朝起きるとすぐに不安で気が重くなり、その気持ちは幼稚園バスが来たときにピークを迎えました。友達はさっさとバスに乗る中、気持ちはついに爆発し、「早く乗りなさい。」と言う母の手をはなさないままバスのステップにある手すりに腕を突っ張り、大泣きに泣いたのです。「僕一人、知らないところに連れて行かれる。」  知らない世界に放り込まれることが本当に不安だったのです。
 そんな経験のある私ですから、息子のことがちょっと心配になりました。彼は制服姿のまま、ウルトラマンのCDを聞き(もう何万回目?)、歌っています。「そうだ、あの歌だ!」以前君に教えてもらって、勇気付けられた歌を今度はお父さんから君に贈ろう!一緒に歌おう!
 
    ウルトラの父が教えた 必殺技で行くぞタロウ    ウルトラの母の涙を 心に抱いて飛ぶんだタロウ

    子供の頃に夢に見た 愛の戦士のときは今    燃えたぎる血潮も情熱も 戦う男の勲章さ

    怪獣倒せ 負けるなタロウ  キックだパンチだスペシウム  父さん見てくれ必殺技を

    みんなの みんなの ヒーローだ   タロウ タロウ タロウ        「愛の戦士タロウ」より

 明日は君の冒険の始まりの日だ。これからいろんなことがあると思うけれど、そんなときは(みんなも)歌ってごらん。勇気が湧いてくるよ。それに、さっき君が言っていた「僕は一人じゃない」ってことも忘れないでいて。君にはウルトラの父と母(私の両親。そんなにカッコよくないっていってるのに!)、タロウ教官(デスレムは嫌だ。)、ウルトラマン兄さん、セブン兄さん、アストラ兄さん(いとこ達と私の弟)、もう一人のセブン兄さん(府中のおじちゃん)そして君に続く妹たち。それにもっともっと多くの人たちが君の事を応援しているし、見守っているんだ。もっと大きくなってからの話かもしれないけど、ひとりではどうしても越えられない壁に当たったときは、迷わずウルトラサインを送るんだ。きっとみんな助けにきてくれるよ。特に君が「兄さん」って呼ぶ人たちは、ウルトラの光を信じたことのある人たちだから「兄弟」って言葉には弱い(メビウス「ミライの妹」より)はずさ。
 次の日の朝、出勤する私に彼はガッツポーズで「がんばるから」と言いました。さあ、翔びたて!メビウス!未来へはばたけ!子供たち!そんな気持ちで家を出ました。
 結局彼はその後も泣くことなく通園し続け、仲良しの友達もたくさんできたようです。「どうだい、恐怖と絶望で包んでやったかい?」と聞く私に

       「僕はウルトラマンだもん。そんなことしないよ。」

 勝手にこちらが心配したとはいえ、あの、いつにない私の優しい言葉はなんだったのか・・・と思う今日この頃です。

翔べ!メビウス!