蔵元便り  9月

 真夏のうだるような暑さが少し和らぎ、朝晩は特にすごしやすくなってきました。涼しい夜風にあたって、ぬる燗で一杯!が心地良い季節です。
 9月、長かった夏休みも終わり、たくさんできた思い出とともに新学期が始まります。
 私も夏休みにはいろいろな思い出があり、話し出せば「あんなこともあった、こんなことも・・・」と次々に思い出すことができます。今回はそんな夏休みの思い出の中で、特異な記憶として残っていて、友達や、親にも話せなかった、というよりも私自身が現実から逃避し、封印してきた思い出を綴ってみたいと思います。
 私が小学生のころ、叔母夫婦は広島に住んでおり、1回だけですが祖母に連れられ、弟と3人で遊びに行ったことがあります。真夏の太陽が照りつけ、広島の街全体が白っぽく見えたのを憶えています。そこで、叔父が連れて行ってくれたところは、「平和記念公園」でした。相当なイタズラ小僧でも、まだ純粋な心を持っていた(今も持ち続けていると私は主張するが)ボクは、原爆ドームを見ただけで戦争や核というものの恐ろしさを感じとり、すぐにそこから立ち去りたい気分だったにもかかわらず、「せっかくだから。」と言われて入った平和祈念館では、平静を装ってはいたものの、もう現実を現実として受け入れることができなくなっていました。目の前に広がる壮絶な光景の中に引きずり込まれ、その場を包みこむ恐怖と絶望に圧倒され、涙を流すこともできず、感情を言葉にすることもできず、ただ、凄まじい吐き気に襲われていたのです。

 ボクはこの時ほど「ウルトラマンになりたい!ウルトラマンの力が欲しい!」と願ったことはありませんでした。怒りにも似た感情を抱きながら、ぎゅっと握りしめた手が震えていたことは忘れません。「またウルトラマンか」って思わないでください。幼稚な小学生のボクにとって唯一の「力」と「平和」の象徴はウルトラマンだったのだから。

 ボクはその時人間の恐ろしさと、自分の力のなさを痛感していました。
 そして、誰かを責めるのではなく、自分を責めていました。
 
 「ボクがウルトラマンだったら、戦争が起きているところに行って、落ちてくるミサイルや爆弾が爆発する前に止められるし、飛び交う銃弾の中だってボクが間に入って盾になれば誰も傷つかない。平和のために、持っている力の全てを使うことができる。お願いだから、ボクをウルトラマンにしてくれっ! みんなを助けたいんだ!  ・・・なんで? どうしてボクにはその力がないんだっ!」

 高度に文明が発達し、自らを霊長類の頂点と定めたはずの人間は、かくも野蛮で残酷です。しかもそれを肯定しようとする人間までいる。大義名分はどうであれ、人間同士が殺しあっていることには変わりありません。そんなこと、絶対にあってはならないことです。
 「誰かを助けることができるその力を、誰もが幸せになるために発達した頭脳を、どうして間違った方向に使ってしまうんだろう。みんなつらく、嫌な思いをしたはずなのに、なぜまた新しい争いが起きるんだろう。」自分に問いかけてみても、何もできない自分の小ささにいら立つばかりで、答えをみつけることなんてできませんでした。
 ボクは、その時の本当の心の中を、誰にも話すことができませんでした。話してもきちんと伝えられないことがわかっていたから。誰かに感想を聞かれても「気持ち悪くなった」としか話さず、心の奥深いところにしまいこみ、封印したのです。封印したとはいっても、心の中に残っていることは事実で、何かの拍子ですぐに飛び出そうとするあの日の記憶を、ボクは必死で押さえつけていました。戦争を扱った番組やドラマなどは、もう絶対に見ることができませんでした。ボクは逃げたのです。封印が解かれてしまうのが恐ろしかったのです。

 でも、やっと今、答えではないけれど希望を見つけました。

 お盆休みは、久しぶりに弟やいとこたちと胃が痛くなるまでお酒を飲みました。それぞれの子供もきて大騒ぎしました。酔っ払った私たちが怪獣になり、息子(いつもながらメビウス)、はとこのシンちゃん(ウルトラマンヒカリがお気に入り)、イチローちゃん(まだウルトラマンデビューしていないが、息子が勝手にマックスと命名)の3人のウルトラマンと「ウルトラマンごっこ」をしました。床が抜けるのではないかと思うくらいに暴れまわり、彼らは汗びっしょりになりながら、4人のおじさん怪獣(みんなウルトラマンを知っているから、なかなかやっつけられない)と戦い、最後にはしつこい皇帝エンペラ星人(弟。息子がそう決めた。)を、力を合わせてやっつけました。私は、ウルトラマンになりきり、心をひとつにして戦う彼らの必死さを見ていて確信しました。
 さあ行こう、メビウス、ヒカリ、マックス。そして続くんだ、しし座の双子ユウにシュン、ユーゾーも、アヤとマオ(君たちはプリキュアかな?)、世界中の子供たち。君たちが持つ「無限のパワー」で、国も、皮膚の色も、宗教も関係なく、みんなが本当に仲良くなれる未来をめざして突っ走ろう!おじさんたち「昭和」のウルトラ兄弟は、君たち「平成」のウルトラ兄弟をいつでも手助けするよ。力や言語ではうまく行かなくても、さっきのようにみんなの心がひとつになったら、きっとなんでもできるよ。みんなで、みんなが優しくなれる未来をめざして、まっすぐに行こう!
 
 ボクがあの日感じたことは、人間として絶対に忘れてはいけないことだと思っています。そして私は、いつの日か、この地球上から争いごとがなくなることを信じています。

封印してきた思い出

暑かった!

 8月に入り、それまでの長雨がうそのように猛暑日が続き、しかも瓶詰め作業が続き、みんな夏バテ気味。ということでバーベキューを行いました。みんなバテ気味とか言っていても、お酒を飲むとなったら準備も早いし、何より元気になります。不思議な人たちです。 
 この日の目玉は「富士宮やきそば」。独特の麺や具材など、普通のやきそばとちょっと違ってます。こうやって鉄板の上で大量に焼くと、雰囲気も違うしとてもおいしかったです。
 帰りはもちろんタクシーで。STOP 飲酒運転です。