蔵元便り  10月

 右の写真は9月16日のものです。当日、市内では「敬老の日」を祝う行事が行われ、私たちはその際に飲んでいただくお酒を運ぶことになっていました。が、あいにくの雨模様。「せっかくのお祝いの日なのに、残念だなぁ。」と思っていたところ、7:30ころには雨はやみ、おまけにきれいな虹まで見ることができました。よく見ると、虹の外側にもうひとつ虹が・・・。虹もお祝いしているようです。
 ここ綾部も高齢化が進み、「限界集落」などという言葉もよく耳にするようになりました。今年ももうすぐ始まる酒造りにしても、蔵人の高齢化(実際にこの蔵の杜氏も70歳を過ぎています)は進んでいます。そろそろ「私ががんばって『一人前』にならないといけないなぁ。」と気を引き締めると共に、「どこのおじいちゃん、おばあちゃんもいつまでも元気で、おいしい綾小町を飲み続けてほしいなぁ。」と思いながら、お酒を届けるために出発するトラックの後姿を見送りました。
 
 9月は酒造りに向け製造計画をたてたり、瓶詰めをしたりで忙しく、更新が遅れてしまいました。休みの日もいろいろとやることがあり、あっという間にすぎてしまった一ヶ月でした。そんななか、デビューしてしまったことがあります。そう、「幼稚園の運動会」にデビューしてしまいました。まだまだ暑い日が続いていましたし、「お母さんだけでいいだろ?」と言っていたのですが、息子が「大玉ころがしはお父さんとやりたい!」と指名してきたため(半分嫌々で)行くことにしました。
 当日は予想通りの猛暑日で、私たち親も大変でしたが、この炎天下で一生懸命走ったリ、演技したりしている子どもたちには本当に感動しました。息子も徒競走ではスタートが遅れ(別なところに気が行っていて、スタートの合図に気づかず遅れた。この注意力のなさは誰に似た?)たものの、よく追い上げて3番目にゴールしました。なかなかやるじゃないか。
 そして、問題の「大玉ころがし」です。各クラスで1チームとなり、玉をバトン代わりに転がし、全員が転がし終えたところでゴールという、よくある競技です。ましてや3歳児のやることですからスピードも出るわけではありません。私は、あまり競技性がないことで少々拍子抜けしていました。それでも競技が始まり、私たちの番が近くなってくると少しは血が騒ぎ始め、屈伸なんかして徐々に戦闘モードに。息子も、私とつないだ手に力が入り興奮しているのがわかります。そうだよね。君はこの日のために暑い中がんばって練習したんだから。
 とうとう次が私たちとなりました。「行こう。がんばろう。」と言った私に、彼は大きくガッツポーズをして「はい、タロウ兄さん。」と頷きました。

 ん?そんなこと家でも言ったことがないのに、しかもなぜこのタイミングで「タロウ兄さん」?

 ・・・そうか、わかったよ。これは君とお父さんが一緒に戦うからだね。メビウスもタロウと一緒に戦うときにそういってたね。それだけ君が真剣だってことなんだね。さあ、行くぞメビウス!目の前の巨大な敵を、兄弟力を合わせて倒すんだ!

 結果は2位でした。 でも、結果はどうであれ、私がうれしかったのは、息子が真剣にやっていたこと。そして、力を合わせてひとつのことができたことです。これからも力を合わせて戦って行かなくてはならないことがたくさんあるでしょうが、今日がその最初の日だと思うと・・・少し感動でした。
 全競技が終わり、彼が誇らしげに見せたアンパンマンのメダルはとても輝いて見えました。

 夕食時も運動会の話題でいっぱいでした。息子は運動会の歌を歌ったりして盛り上がりました。その後、運動会のビデオを観ながら(既にお酒も少々すすみすぎていたこともあり)、「運動会楽しかったな。君が真剣にやっているところを見られたし、『タロウ兄さん』なんて言われてちょっと嬉しかったよ。つぎも力を合わせて頑張ろう。」と優しく語りかけた私に、息子は

                   「でもそんなのカンケーねぇ!はい、おっぱっぴー!」

 と一言。息子にげんこつを1発浴びせるとともに、小島よしおに微かに殺意をおぼえました。
 が、この話には続きが。ビデオも終わり、テーブルの上もすっかり片付いているのに、すっかりいい気になった私は1人でまだお酒を飲んでいました。
 「いいかげんでやめたら?飲みすぎだよ。」と妻。「うるさい、今日はいいんだよ!」と私。そんな言葉の応酬の最中に、息子が例のテーマ曲を口ずさみながら
 「お父さんがー お母さんにー お酒の飲みすぎでー 怒られましたー  でもそんなのカンケーねぇ!でもそんなのカンケーねぇ!」
 しかもパンツ一丁でした。私も妻も思わず笑ってしまいました。うん、そうだそうだ「そんなのカンケーねぇ」だな。やっぱり小島よしおを許してあげよう。君のおかげでケンカにならずに済んだよ。
 そんなこんなでずっと笑っていられた、運動会の一日でした。

最初の戦い

虹も祝福?