蔵元便り
夢の続き
里山の木々も赤や黄色に色づきはじめ、本格的に熱燗の美味しい季節となりました。造りの始まる酒蔵は、これから一年で最もいそがしく、にぎやかな時期に入ります。今年も酒が造れることに感謝し、約半年間がんばって行こうと一同張り切っております。
朝晩は冷え込みますが、昼間は暖かいこの時期、週末になりますと、当蔵の前の道路をツーリングに出かけるたくさんのバイクや車の方たちが通って行きます。そして、これからはカニのおいしい季節です。国道27号、国道173号をお通りの際はぜひお立ち寄りください。
蔵の前をツーリングするバイクやスポーツカーたちを見て、息子が「あっ!ロメオだ!」「ロータスだ!」「ドゥカティだ!」と大はしゃぎです。彼を見ていると、ウルトラマンや自動車などに興味を持ってくれたことを嬉しく思っています。自動車だけが趣味といっても良い私ですから、息子にも同じ趣味を持って欲しいと密かに願っていたのです。
私が幼稚園の頃、父の愛車は、2000ccのツインカムエンジンを載せた、紺色のセダンでした。そのセダンはとても速く、盾のグリルと蛇のエンブレムが誇らしげでした。エンブレムの中の蛇の毒は私の身体の中を一瞬で駆け巡り、すっかり虜にしてしまいました。私は父からもらったエンブレムのステッカーを家の大黒柱に貼り付け、毎日学校に行くときも、帰ってきたときも見ては(というより、必ず目に入った)、「ボクもいつか手に入れたいな」と思い続けていました。
それから二十数年後、ボーナスには一切手をつけず、ローンを組んで買った車はV6ターボエンジンを載せた赤いクーペでした。その鼻先につけられた盾のグリルと蛇のエンブレム。それと同じくらい私も鼻高々でした。初恋であり、夢だったあの車に乗ることができた感激は、未だに忘れられません。時を同じくして弟がスパイダーに乗り、いとこ兄弟がランチアデルタ、アルファ155に乗り、よくツーリングにも出かけました。今では夢のような贅沢な話です。
子供の頃に、すごくカッコ良くて、すごく速くて、それで家族みんなで楽しく旅行して・・・。アルファロメオという車の魔力の虜になってしまったボクたちです。車に対する価値観が少し変わっていても不思議ではありません。
その後、結婚し子供も生まれたことから、あのGTVは今、実家のガレージで眠りについています。たまに実家に帰った際に、エンジンをかけてみると息子は「やっぱりロメオが一番だね。二番目がルノー(今の愛車)だ!」と目頭が熱くなるようなことを言ってくれます。
ミニカーの「トミカ」の最近の売れ筋は「ミニバン」だそうです。やっぱり今でも子供たちにとって「お父さんの車」が一番なのでしょう。ただ、僕らが小さかった頃のように、夢を持たせてくれるような車は世界中にどれだけあるでしょうか?フェラーリやポルシェのようなスーパーカーではなく、「お父さんでもちょっと頑張れば、ちょっと我慢すれば・・・」と思わせてくれる車です。お父さんがステアリングを切り、回転を合わせながらシフトダウンする様子を男の子は「カッコいい!」と思うものです。息子は「ボクは(F-1)チャンピオンに、アロンソになる!」と夢を語っています。私は息子が夢を持ち、僕たちが見た夢の続きを見てくれるなら、痩せ我慢してでもスポーツ(ティ)カーに乗りたいと思ってしまいます。
酒造りスタート! 蔵入り
11月1日。今年もこの日がやってきました。古くから吉日を選び杜氏以下蔵人が揃って蔵に入る日「蔵入り」です。心も新たに酒造りに向かうため、簡単ですが酒宴を開きました。
杜氏の尾崎さん。全国的にも名高い但馬杜氏で、研究熱心な方です。仕事には真面目ですが、それ以外は・・・。とにかく面白いおじさんです。上の写真は、今年の酒造りについて考え方や抱負を熱く語っているところです。
乾杯の後、お待ちかねの酒宴がスタート!「しまだや」さんのお料理もいつもの通り本当に美味しく、宴会も大盛り上がり!「皆で力を合わせて、良い酒を造ろう」と心は一つにまとまりました。
宴会の後はもちろんタクシーで皆帰宅。「STOP飲酒運転」です。
11月