蔵元便り  7月

羽ばたけ!天馬の如く

 梅雨が明けたと思ったら、とたんに猛暑がやってきました。子供のころはこの青空が待ち遠しかったのに、今では暑さに身体がこたえるようになり、あまり歓迎できません。心はイタズラ小僧のままでも、体力はそれなりに落ちていきます。歳はとりたくないものです。
 我が家の現役イタズラ小僧とおてんば娘はいたって元気、先日も土曜日を丸一日使っての剣道の稽古を難なくこなしていました。
 子供たちが剣道をしていることは以前にも書きましたが、最近、息子が人が変わったように熱心に稽古するようになってきました。どうやら、道場内の試合で自信をつけ、いろいろな大会でも勝ち始めたことと、絶対に負けたくない存在がお隣の福知山の道場にいるからのようです。
 息子には、彼が剣道を始めたときから、事あるごとに素振りをさせてきました。私が言ったことは一つ。「まっすぐ振りなさい。」でした。きちんと竹刀を持ち、きちんとした姿勢で構えれば、まっすぐ竹刀は振れるはずです。そうすれば余分な力は必要なく、最短距離で竹刀が出て、いずれは試合で「結果」として現れてくるだろうと思ったからです。最初は嫌々でした。何度言っても変な癖がでて、叱られながら、泣きながらやったこともあります。たとえ嫌々でも、きちんとした形を早いうちに身体に染み込ませなければ、試合で勝つなど無理です。泣きながら必死に竹刀を振る息子に、心の中で何度「ゴメン」って謝ったでしょうか。でも、私の中にある「素振りは隠れて家で、技を覚えるのは道場で。」という考え方は変わりませんでした。だって、まっすぐに竹刀を振り下ろすこともできないのに、技を教えてもらおうなんて、失礼で図々しすぎるじゃないですか。
 そんなこんなが続いていましたが、先にも書いたように、彼ら(息子と同じチーム4年生)は少しずつ結果を出し始めました。彼らは、彼らの道場を開いたN先生が、付きっきりで基本の動作を指導してくれた最後の生徒達です。みっちり教え込まれた動作の上に、今の先生方のスピードのある、小さな振りという教えが加わって、試合中も格好がサマになってきました。特に息子は面が得意のようです。ある先生は、なかなか勝てないときでも、「大丈夫ですよ。きれいな面を持ってますから、絶対に勝てるようになります。」と私を(親を!)励ましてくれていました。

 ある試合(彼らが遂にブレークし、今の自信を得た試合)の前の晩、仕事で見に行けない私は息子に向かって、彼が今ハマっている(そして私もその昔、少年ジャンプで読んでいた)聖闘士星矢(セイントセイヤ)に例えて話しました。(相変わらず幼い私)

 「キミは絶対に勝てる。今の先生達も「いいものを持ってる。」って言ってくれるし、何よりも、N先生がお父さんには「必ず強くなります。」って言ってくれたんだから。そのN先生が教えてくれたきれいな面は、キミの必殺技だろ。そう、星矢で言えば、流星拳だ。だから、試合中ずっと集中して小宇宙(コスモ・気みたいなものか)を高めるんだ。どんなに強いヤツでも必ず隙を見せることがある。そのときに、それまで高めた小宇宙を一気に開放するんだ。「ペガサス!流星拳!!」って。でも、それをするには、下がったり、足を止めたりしたら無理だし、声が小さいなんてもってのほかだ。気持ちで負けてたら、相手は隙なんか見せないし、絶対に勝てない。前に行く気持ちを忘れるな。」

 結果は団体戦2位の好成績でした。後で見ましたが、初めての表彰式で緊張している姿に思わず吹き出してしまいましたが、本人は初めての銀メダル、その日は嬉しそうにずっと眺めていました。良かったな、頑張ったな。
 息子の今年の七夕様へのお願いは、「剣道で金メダルが取りたい。」でした。勝つことで自信が生まれ、やっと楽しく剣道に向き合えるようになったようです。ついでに、星矢口調でキミに一言言っておこう。

「天馬座(ペガサス)の聖闘士は何度倒れても、必ず立ち上がり、最後は勝つ。諦めなければ、いつかアイツにも勝てるはずだ。キミも天馬のようにコート内を駆け回れ。飛び立つときが来たんだ!」

さあ、次は「道場一強い気持を持っている。」と期待される娘の番です。兄ちゃんに比べ、熱しやすく冷めやすいので、どうなることでしょう。
 
 最後に、先に書いた一日稽古の後の懇親会で、どうもなんかやらかしたらしく、妻と娘から「あんなこと言ってた。」「こんなことも言ってた。」と記憶にないことをさんざん言われてしまいました。大概は覚えているのですが、ディテールの部分となると・・・。やっぱり歳はとりたくないものです。まあ、私が言い出しっぺなので、率先して竹刀を持って子供と一緒に道場に行こうかとは思っていますが・・・。どなたか、一緒に素振りする方いませんか?