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  「凡海郷(おおしあま)昔ばなし・龍の章」 
               舞鶴銘菓「凡海郷」物語       著者:米山」隆一朗

 (波の音)
  むかし、むかし、丹後の国に凡海郷というそれはそれは美しい郷がありました。
  この郷に たいそう働き者のおっとうと一人息子の太郎がおりました。
  ある日 おっとうは、荒れた海に漁にでたまま 夜になっても帰ってきませんでした。
  おっとうは、高波にのまれて死んでいたのです。

  「おっとう 帰ってきてよう。神様!おっとうが、無事でありますように。」
  太郎は、毎日、毎日浜に出ては祈っていました。

  その姿を天上から見ていた神様は、太郎がかわいそうになり 
  海の底深く眠っているおっとうに言いました。

  「おっとうよ!太郎は、毎日毎日 お前が無事に帰ってくることを祈っている。
  わしは、お前を生き返らせてやりたい。
  しかし、わしにも 一度死んだ人間をそのまま生き返らせることはできぬ。
  龍の姿にならお前を生き返らせることができるのだが・・・」

  「それは本当ですかか神様!お願いします。
  太郎のそばに帰れるのなら たとえ姿が龍になってもかまいません。」

  「よし わかった。お前がそれほど望むのなら その望みをかなえてやろう。」

  「お願いします。」

 (生き返ったという事が感じられる音)

  そして、おっとうは、白い龍になりました。
  しかし、この姿では太郎の前に出ることはできません。
  海から見守ってやることしかできませんでしたが、それでもおっとうは幸せでした。

  白い龍になったおっとうは 太郎が、漁に出れば魚が獲れるようにしてやり
  また、日照が続くと雨を降らせて田畑を守ってやりました。

  いつしか 郷のみんなは 白い龍が太郎を守っているのを知り 
  死んだおっとうが白い龍の姿となって帰ってきているのだと思いました。
  そして、太郎もこの白い龍をおっとうだと信じるようになっていました。

 (ドラマの展開が急に悪いほうに行くことを暗示させる音)

  そんなある日 一人の男がこの郷にやってきました。
  この男は、物を盗んだり、田畑を荒らしたり悪いことばかりするのでした。
  郷のみんなは、この男をこらしめようと捕まえました。

 (悪者登場の音)

  するとどうでしょう。この男は、黒い龍の姿になって郷を壊しはじめたのです。

  「おっとう たすけて!」

  太郎は、必死に叫びました。

 (正義の味方登場の音)

  すると海から 白い龍となったおっとうが現れ
  この時、はじめて白い龍は太郎に声をかけました。

  「太郎よ はやく! 郷のはずれにある椎の林にみんなを連れて逃げなさい。」

  「やっぱり おっとうだったんだね!」

  ゆっくりおっとうと話したい太郎でしたが、今はそれどころではありません。
  太郎は、郷のみんなを連れて おっとうが言っていた椎の林に逃げ込みました。

 (戦いの音)

  おっとうの白い龍と悪者の黒い龍のすさまじい戦いが始まりました。

  三日三晩 戦いは続きました。

  (音)大地はゆれ (音)海は逆巻き、(音)空には稲妻がはしり、
  どちらが勝つのかだれにもわかりませんでした。

  「おっとう!がんばれ!」
  太郎も郷のみんなも必死に祈りました。

 (クライマックスの音)

  おっとうの白い龍は最後の力を振り絞り 
  悪者の黒い龍の体に巻き付き
  空高く舞い上がったかと思うと今度は 地面めがけてまっさかさまにおちてきました。

 (衝撃音)

  そして、そのまま地面に突っ込んだのでした。

 (大地の割れる音)
  大地はどこまでも割れました。

 (大地が沈む音)
  そして、だんだんと大地は海に沈みはしめ
  とうとう郷のほとんどは海に消えてしまいました。
  太郎と郷のみんなは、椎の林に逃げ込んでいたので無事でした。
  しかし、おっとうの白い龍は、いつまでまっても
  とうとう姿を見せませんでした。

 (ドラマの終わりの音)

  皆さん 舞鶴の沖の浮かぶ おしま(冠島)こしま(沓島)は、
  凡海郷にあった高い山が残ったのだと言い伝えられています。
  そして、大浦半島の三浜の海蔵寺というお寺の裏山一帯には、
  凡海郷の時代から続く椎の林が今でもあり、
  この村には、津波や地震の時にはこの椎の林に逃げ込むと助かるというお話が残っています。

 (フィナーレ)

    この物語は、「丹後風土記残欠」にある「凡海郷」という
    舞鶴辺りに実在した郷(土地)が、
    大宝元年(701年)に大地震のため沈んでしまったという史実を基に創作した朗読劇です。

    
    実は、もう一つ別の「凡海郷伝説」が先にできていました。
    
    なぜ二つもお話を創作しなければならなかったのかは、内緒です。ごめんなさい!

 
 

    新「凡海郷(おおしあま)」伝説  
                                    
                                   著者:米山」隆一朗

  昔むかし、天上に それはそれは大変なお酒の好きな神様がおったそうな。
  ある時、天界の宮殿に不老不死の大変美味しいお酒があることを聞き
  この神様は、「一度味わってみたいものじゃ」と思っておりました。

  日ごとにその思いはつのり、とうとうこの神様は、宮殿に忍び込み
  この不老不死のお酒を見つけ出してしまいました。

  そして、その芳しい匂いを嗅ぐうち、少しぐらい呑んでも見つかりはしないだろうと思い呑み始めたのですが、 あまりの美味しさにあっという間に酒壺を空にしてしまったのです。

  さあ、宮殿の番をしていた神様たちの怒ったこと、怒ったこと
  天上の大神様の前に この呑んだくれの神様をつきだしました。

  天上の大神様も話を聞き大変お怒りになり、
  この神様を下界へと追放なされたのでした。

  追放されたこの神様は、今の舞鶴辺りに下って着ました。
  地上に下った神様ですが、あいも変わらず酒に溺れ、
  性格が変わったように暴れくるい村々を荒らしまわりました。

  これを天上から見ていた大穴持(おおなむち)、少彦名(すくなひこ)の二人の神様は、
  この地に散らばっていた小さな島々を寄せ集め大地を創り、
  その地下深くこの酔いどれ神様を閉じ込めなされたのでした。

  土地の者達は、この新しい土地を凡海郷と呼び
  再び、この神様が地上に出てこれないようにと、
  神社をつくって神様の怒りを静める為にお酒を絶やさぬように供えました。
  それからの凡海郷は、神様のご加護もあり海での災いもなく栄え続けたのでした。

  時は、大宝元年(701年:大宝律令完成)。
  この土地に住む豪族は、中央への権力を誇示する為に自分達の大きな墓を造ろうとしました。
  そして、 邪魔になるこの神社を郷の者達が止めるのも聞かず取り壊してしまったのです。

  地下に閉じ込められていた神様は、豪族のおごりたかぶった態度に怒りました。
  三日三晩地震を起こし、とうとうこの郷を青い海へもどしてしまったのです。

  以上お付き合いねがった皆様には感謝申し上げます。

 
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