病棟の喫煙室

病棟のデイルームにある喫煙室は、まるで井戸端会議場。

尿管結石で入院したときの話。

年輩のおじさんがたばこを吸いに入ってきた。

ああ、痛い、痛い。

どうされたんですか。

いやあ、前立腺肥大でね、きのう手術したばかりで、痛いんだよ。

どうやって手術するんですか。

なに、ケツの穴からカテーテル突っ込んで、削り取るんだよ。

おまえさんは、どうしたんだい。

尿管結石です。

ああ、あれ、衝撃波なんたらって言う手術かい。
痛いらしいね。

いえ、言うほどじゃなかったですよ。
なんか、ムチで背中をたたかれてるような感じです。

で、割れたのかい。

いえ、あした、また手術です。

そうかい。がんばりな。

ありがとうございます。

長く入院していると、喫煙室にくるメンバーが決まってくる。

両足にギブスをして、車椅子に乗ったおじさんがやってくる。

喫煙室に入れないので、入口の扉をあけて、自前の灰皿をもって一服する。
いつも、上の階からエレベータでおりてくる。
上の階は整形外科だが、喫煙室がないらしい。

自然に、みんなが入口を開けてあげるようになる。

わきの下に逆三角形の浮輪みたいなギブスをはさんだおじさんがおりてくる。

どうされたんですか。

野良仕事中に、崖から転げ落ちて、肩を骨折しましてね。
これで、二の腕を水平にしておかないと駄目なんですよ。

若いおねえさんが、となりの棟からやってくる。
となりは、産婦人科である。

ふう・・・

どうされたんですか。

子供が産れましてね。
やっとタバコが吸えるわ。

おめでとうございます。男の子ですか。

はい。

お子さんは、一人目ですか。

いいえ、上に女の子がいます。

そうですか。うまく産み分けれましたね。

主人が、あっち、好きなものですから、
帝王切開のついでに、卵管をくくってもらったの。
もう、これ以上子供ができたら困っちゃうから。

ほう、そんな手術もあるのですね。

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それにしても、泌尿器科と産婦人科のあいだに、
喫煙室があるなんて.....