LED(発光ダイオード)を調光(明るさを変える)する回路を考えてみました。
単純に可変抵抗器(ボリューム)を接続すればよいように思いますが、
LEDの明るさは、ボリュームの回転角度に比例しません。
LEDの電圧と電流の関係が、直線的ではないからです。
(こちらを参照ください。)
ボリュームを使った回路
上図の回路で、VR(ボリューム)をB10kΩ、R(抵抗)を100Ω、
VCCを3V(乾電池2本直列)として、実際に点灯させてみました。
(下図)
ボリューム最小
(抵抗最大)
うっすら点灯している。
ボリューム3/4
およそ半分以下の明るさ。
ボリューム最大
(抵抗最小)
急激に明るくなる。
ボリュームを最小(抵抗を最大)にしても、うっすら光ります。
ボリュームの位置が3/4回転で半分以下の明るさです。
さらに、回すと急激に明るくなります。
ボリュームを使った回路は、実用的ではありません。
そこで、トランジスタを使った回路を考えてみます。
トランジスタは、ベース(B)−エミッタ(E)間の電流に比例して、
(数百倍の)コレクタ(C)−エミッタ(E)間電流が流れます。
ボリュームで、ベース電流を変化させて、コレクタに流れる電流を調整します。
これで、LEDを調光させます。
トランジスタを使った回路
ベース−エミッタにかかる電圧(=R2にかかる電圧)をボリューム(VR)で調整し、
トランジスタのOFFする電圧から、ONする電圧になるように計算してみます。
上図で、R2にかかる電圧が最大になるのは、ボリュームの抵抗値が最小のときで、
その電圧をVONとします。
ボリュームの抵抗値が最大のとき、R2にかかる電圧は、最小になり、
その電圧をVOFFとします。
ボリュームの最大抵抗値をRVRとすると、
それぞれ、つぎの式が成り立ちます。
VON=VCC・R2/(R1+R2)−−−−−−−(1)
VOFF=VCC・R2/(R1+R2+RVR)−−−−(2)
この連立方程式を解くと、
R1=R2・((VCC/VON)−1)−−−−−−−−−−−(3)
R2=RVR・VON・VOFF/(VCC・(VON−VOFF))−−−(4)
ここで、ボリュームをB10kΩ(RVR=10)を使うとして、計算してみます。
VCC=3V(乾電池2本直列)
VON=0.8V(トランジスタが確実にONになる電圧とします。)
VOFF=0.5V(トランジスタが確実にOFFになる電圧とします。)
これらを、(4)式に代入して、
R2=4.4444、近いところで、4.7kΩを選定。
(3)式にR2=4.7を代入して、
R1=12.925、近いところで、12kΩを選定。
トランジスタの足(リード線)は、2SC1815の場合、
型番の印刷してある平らな面からみて、
左からエミッタ(E)、コレクタ(C)、ベース(B)です。
「エクボ」と、覚えましょう。
また、トランジスタには「ランク」があります。
これは、直流電流増幅率(hFE)の大きさにより、各社記号で表示しています。
hFEとは、ベース電流の何倍のコレクタ電流が流れるかの比率です。
今回は、Yランクを使いましたが、GRランクでも問題ないと思います。
ボリュームの端子は、つまみのある面からみて、
左から、1,2,3です。
端子2,3を使えば、左一杯に回すと抵抗が最大、
右一杯に回すと抵抗が最小になります。
ボリュームにはAカーブ、Bカーブ、Cカーブがあります。
これは、ボリュームの回転角度に対する抵抗の変化率で、
今回は変化率が直線的な、Bカーブを使用しました。
ボリュームの定格電力は、0.1Wのもので充分です。
抵抗R1、R2は、炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)1/4Wを使います。
抵抗値は、カラーコードで表示されています。
カーボン抵抗は、4本の色の帯が印刷されています。
リード線に近いほうの帯の1,2,3本目が抵抗値で最後の4本目が誤差を表します。
カラーコードは、下表のとおりです。
4.7kΩなら、47×102Ωなので、黄−紫−赤−金です。
12kΩなら、12×103Ωなので、茶−赤−橙−金です。
(カーボン抵抗は、誤差5%が一般的です。)
実際に、配線をして実験してみました。(下図)
抵抗R(トランジスタのコレクタとLEDの間の抵抗)は、取り付けていません。
コレクタ−エミッタ間電圧(VCE)とコレクタ電流(IC)の積(コレクタ損失PC)が、
定格の範囲なので省略しています。
PC=VCE×IC=(VCC−VF)×IF
VFは、LEDの順方向電圧(≒2V)、IFは、LEDの順方向電流(≒10mA)です。
PC=(3V−2V)×10mA=10mW < 400mW(2SC1815の場合)
コレクタ損失が大きい場合は、抵抗Rを挿入してください。
抵抗Rの計算式は、つぎのとおりです。
R=(VCC−VF−VCEsat)/IF
ここで、VCEsatは、トランジスタの、エミッタ−コレクタ間飽和電圧で、
2SC1815の場合、約0.2Vです。
ボリューム最小
(抵抗最大)
LEDは、消灯。
ボリューム1/2
(抵抗半分)
およそ半分の明るさ。
ボリューム最大
(抵抗最小)
明るく点灯。
ボリュームを最小にして、LEDが消灯していても、回路には電流が流れています。
実用的な回路とするには、必ずスイッチ(SW)を取り付けてください。
スイッチ付きのボリュームもあります。
交流では、トランジスタが使えませんので、この回路では、調光できません。
サイリスタ、またはトライアックで回路を作る必要があります。