MCCB(配線用しゃ断器)が、短絡電流をしゃ断するまでに流れる電流によるエネルギーで、電線の被覆が焼損してはなりません。
電流によるエネルギーは、I²tという、電流の2乗と時間(秒)の積で計算します。
電線(銅線)のI²tの計算式は、下記のとおりです。
I²t=226²×S²×ln((234.5+θt)/(234.5+θi))(単位:A²s)
Sは電線断面積(単位:mm²)
IV電線では、短絡前の温度θiを60℃、短絡時の温度θtを120℃として計算します。
WL1(MLFC)電線では、短絡前の温度θiを110℃、短絡時の温度θtを230℃として計算します。
(MLFCは、日立金属株式会社の登録商標です)
求めた、電線のI²tが、MCCBの通過I²tより大きいものが、最小電線サイズとなります。
MCCBの通過I²tは、短絡電流を時間Tでしゃ断するとして、
次の式で計算してみます。
I=Issinωt
I²t=∫0TIs²sin²ωtdt=∫0TIs²(1-cos2ωt)/2dt=Is²[t/2-1/4ω・sin2ωt]0T=Is²(T/2-1/4ω・sin2ωT)
Tを1/2サイクル(1/2f)として計算すると、
sin2ωT=sin2・2・π・f・(1/2f)=sin2π=0であるから、
I²t=Is²・(T/2)=Is²・(1/2f)/2
ここで、fは、周波数(単位:Hz)、ω=2・π・f(単位:rad/s)です。
MCCB、ヒューズ、ELCB(漏電しゃ断器)、サーキットプロテクタ(CBE)は、しゃ断時に短絡電流を限流する特性があるので、
実際の通過I²tは、上式で計算した値より小さくなります。
設計する際には、使用するMCCB、ヒューズ、ELCB、サーキットプロテクタの通過I²tをメーカーの資料で調査し、
下表の電線のI²tから、最小電線サイズを決定してください。
電線サイズ (mm²) | IVのI²t (×106A²s) | WL1(MLFC)の I²t(×106A²s) |
---|---|---|
0.9 | 0.007672 | |
1.25 | 0.01480 | 0.02385 |
2 | 0.03788 | 0.06106 |
3.5 | 0.1160 | 0.1870 |
5.5 | 0.2865 | 0.4618 |
8 | 0.6061 | 0.9770 |
14 | 1.856 | 2.992 |
22 | 4.584 | 7.388 |
30 | 13.74 | |
38 | 13.68 | 22.04 |
50 | 38.16 | |
60 | 34.10 | 54.95 |
80 | 97.70 | |
100 | 94.71 | 152.6 |
125 | 238.5 | |
150 | 213.1 | 343.5 |
200 | 378.8 | 610.6 |
250 | 591.9 | 954.1 |