配線用しゃ断器(MCCB)、漏電しゃ断器(ELCB)、サーキットプロテクタ(CBE)およびヒューズ(F)の選定は、
負荷の定格電流および漏電電流と動作時間(ELCBの場合)で選定しますが、もうひとつ選定時に決めなければならない定格があります。
しゃ断容量です。
電気回路で、短絡(ショート)がおきると、回路には、非常に大きな電流(短絡電流)が流れ、機器の焼損、しいては火災事故につながります。
MCCB、ELCB、CBEおよびヒューズは、この短絡電流を確実にしゃ断できるものとしなければなりません。
そのため、MCCB、ELCB、CBEおよびヒューズを選定する場合には、短絡電流も計算しておく必要があります。
短絡電流がわかるとMCCB、ELCB、CBEおよびヒューズの定格しゃ断容量から、
選定に必要な、フレーム値やシリーズ(汎用、高性能、大容量しゃ断タイプなど)を決定できます。
短絡電流により、電線が焼損しないよう、最小電線サイズも考慮しておく必要があります。
MCCBに接続できる最小電線サイズについては、こちらを参照ください。
短絡電流の計算は、基本的には、オームの法則で計算できます。
I=V/Z(Zはインピーダンス)
回路に、変圧器が存在すると、変圧器の一次・二次の巻き線比を考慮して、インピーダンスを換算する必要があり、計算が煩雑になります。
そこで、短絡電流を計算する場合は、一般に、パーセントインピーダンスを用います。
パーセントインピーダンス(%Z)とは、定格電流I(A)を流した時の、インピーダンスZ(Ω)による電圧降下を、
定格電圧V(V)の比の百分率で表したもので、定格容量P(kVA)を用い、下記の式で表わします。
%Z=ZI/V×100=ZP×1000/V²×100 (単位:%)
上式でわかるように、パーセントインピーダンスは、定格容量Pの値に比例するので、パーセントインピーダンスを合成(加算)する場合は、
基準容量を決めておき、定格容量のパーセントインピーダンスを、基準容量のパーセントインピーダンスに合わせる(換算する)必要があります。
(基準容量に換算する計算により、インピーダンスの変圧器一次側から二次側への換算が不要になります。)
基準容量をいくらにするかは、自由です。(系統の最大の変圧器の定格容量を基準容量にするとよいでしょう。)
定格容量P’(kVA)のパーセントインピーダンス%Z’を、
基準容量P(kVA)のパーセントインピーダンス%Zに変換する計算式は、つぎのとおりです。
%Z=%Z’×P/P’
パーセントインピーダンスの基準容量を一致させると、インピーダンスの合成は、そのまま、加算することができます。
いっぽう、インピーダンスは、抵抗分R(実数)とリアクタンス分X(虚数)の
複素数で表します。
パーセントインピーダンスも同様に、複素数になり、抵抗分を%R、リアクタンス分を%Xで表します。
%Z=%R+j%X (jは虚数単位。j²=−1)
複素数の加算は、それぞれ、実数分どうし、虚数分どうしを加算します。
最終的に、合成(加算)したパーセントインピーダンスは、その絶対値をとり、短絡電流の計算に用います。
複素表現のパーセントインピーダンスの絶対値の計算式は、つぎのとおりです。
|%Z|=√(%R²+%X²)
インピーダンスで大きなものは、変圧器および電線です。
変圧器および電線のインピーダンスを調査し、系統のパーセントインピーダンス(|%Z|)を求めれば、短絡電流は、つぎの計算式で求められます。
三相回路の場合
IS3=P×1000/(√3×V×|%Z|)×100 (単位:A)
単相回路の場合
IS1=P×1000/(V×|%Z|)×100 (単位:A)
(注意)単相回路の電線のインピーダンスは、往復電路にあるため、2倍にして計算しています。