複素平面の回転ベクトル

複素平面の単位円を回転するベクトルは、
=−1とすると、
(電気の計算では、”i”は、電流を表すため、虚数は、”j”と表記する。)
(”e”は、自然対数の底で、電気の計算では、電圧と区別するため”ε”と表記する場合もある。)

jθ=cosθ+jsinθ・・・(1)

複素平面の回転ベクトル

”θ”を、時間の関数にするため、”ω”を用いる。
(”ω”は角速度。単位=rad/s:ラジアン毎秒)
ω=2πf。ここで、”f”は、周波数(単位=Hz:ヘルツ)とする。
あらためて、θ=ωtとおくと、回転ベクトルは次のように書ける。

jωt=cosωt+jsinωt・・・(2)

下図の電気回路の、電圧平衡式は、

V=R・I+L・dI/dt+1/C・∫Idt・・・(3)

電気回路

上記(2)式を用いて交流電流を回転ベクトルで表現し、
”Im”を電流の大きさとすると、I=Im・ejωt

これを、(3)式に代入すると、

V=R・Im・ejωt+L・d/dt・Im・ejωt+1/C・∫Im・ejωtdt・・・(4)

jωtを”t”で微分すると、jω・ejωt

jωtを”t”で積分すると、1/jω・ejωt

したがって、(4)式は、次のようになる。

V=R・Im・ejωt+jωL・Im・ejωt+1/jωC・Im・ejωt・・・(5)

(4)式の、微分および積分は、虚数”j”を用いることにより、上記(5)式の通りとなり、
交流電気回路の計算が、代数計算で簡単に行うことができるようになる。

ここで、実数は有効電圧または電流(実際に、回路に流れる電流または電圧)、
虚数は無効電圧または電流(回路に蓄えられるエネルギ)を表すことになる。

また、次のように(5)式を、Im・ejωtでまとめれば、

V=(R+(jωL+1/jωC))Im・ejωt・・・(6)

上記(6)式の係数は、虚数”j”をまとめれば、

Z=R+j(ωL−1/ωC)・・・(7)

電気回路の電圧平衡式(3)は、(6)(7)式により、

V=ZI・・・(8)

となり、交流電気回路でも、オームの法則が成り立っていることがわかる。

(7)式の”Z”は、インピーダンスとよび、交流抵抗を示す。

”Z”は、複素数であるため、その大きさを求める場合、次の通り絶対値をとる。

|Z|=√(R+(ωL−1/ωC)

ωL−1/ωC=0となるように、コイルのインダクタンス”L”(単位=H:ヘンリー)
またはコンデンサのキャパシタンス”C”(単位=F:ファラド)を定めれば、
インピーダンス”Z”は、周波数と無関係になる。

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(1)式は、下記のように求める。

f(x)=ax+bx+cx+dを微分していく。
f’(x)=3ax+2bx+c
f’’(x)=3・2ax+2・1b
f’’’(x)=3・2・1a
上式に、x=0を代入すると、各項の係数が求められる。

一般化して、以下の式が書ける。

f(x)=f(0)+f’(0)x+1/(2×1)×f’’(0)x+1/(3×2×1)×f’’’(0)x+・・・+1/n!×f(0)x

これを、e、cosx、sinx、にあてはめる。
d/dx・e=e
d/dx・cosx=−sinx
d/dx・sinx=cosx
であるから、

=1+x+(1/2)x+(1/6)x+(1/24)x+(1/120)x・・・・

cosx=1−(1/2)x+(1/24)x+・・・・

sinx=x−(1/6)x+(1/120)x+・・・・

マイナスを合わせるため、”j”を用いる。

jsinx=jx−j(1/6)x+j(1/120)x+・・・・

jx=1+jx−(1/2)x−j(1/6)x+(1/24)x+j(1/120)x・・・・

したがって、
jx=cosx+jsinx
が成り立つ。